LIFE STREAM Black1


 男はライフストリームが自分の精神──かつての体験や思考、感情の記憶──を削り取ろうとしているのを感じていた。このまま流れに身をまかせてしまえば、やがて自分という存在は拡散し、星を巡る精神エネルギーの中に消えてしまう。許されないことだと男は思った。星は支配するものであって、そのシステムに貢献することなど、敗北以外の何ものでもない。

 男はライフストリームが大きく動き出すのを感じた。それもまた別の敗北のあかしだった。このライフストリームが地上にき出した時、あのクラウドは勝利を確信するに違いないと男は考えた。クラウドは男を二度もライフストリームに送り込んだ相手だった。男は、精神の核となるものを失わなければ、星のシステムから独立した存在でいられることを知っていた。クラウド。クラウドを核にしてやろうと男は決めた。そしてクラウドにもそのことを教えてやりたいと考えた。おれはおまえを思い続ける。その証を、おまえにも見せてやろう。