LIFE STREAM Black2


 ライフストリームが地上に噴き出す時、男は最早意味のない記憶を星にくれてやった。少年だった頃の記憶、数少ない友の記憶、無自覚だった頃の戦いの記憶、かつてあった日々の生活の記憶──それらは奔流の一部となって、メテオを包み込み、やがて消えてしまった。同時に、精神の核と、それに強く結びついた思いは、幾筋もの奔流を乗り移って、大地を、街々を飛び回った。逃げ回る、あるいは唖然と立ちすくむ者たちが奔流にみ込まれる時、男は自分の刻印を相手に与えることにした。クラウドがその刻印に気づけば、自分はけして消えることはないと男は確信していた。クラウドがおれを覚えている限り、おれはいつでも存在することができる。ライフストリームの中であれ、地上であれ。たとえ自分の精神が拡散してしまうことがあっても、ほんの一片の記憶が星を巡っていれば、やがてクラウドの意識を頼りに自分を取り戻せると男は考えていた。