LIFE STREAM White2


 女は、ライフストリームの中に、なかなか周囲に溶け込まない精神が増えたことを知っていた。それはあの男の精神とは違っていたが、同じ種類の感情でライフストリームを拒否していることに気づいた。憎しみ──星への思いが憎しみに染まっているところが、あの男と同じだった。男が地上に影響を及ぼした結果なのだと女は思った。

 女はライフストリームに入ってきたばかりの、憎しみに満ちた精神に近づいて、それをいやそうとした。表層の憎しみの中には、普通の人間としての、平凡ではあるが、喜びも少なくはない記憶が隠されていた。女はそれを解放して、ライフストリームに溶かしてやった。思いの核を失った表層の憎しみは、やがて消えていった。女は方法を見つけたが、しかし、憎しみで覆われた精神は次から次へと現れ、女ひとりの力ではどうしようもなかった。女は流れの中を駆け巡り、協力してくれる精神を探し求めた。消え去る寸前の古代種。その意識の欠片かけらが女の意志を受け取ってくれた。かつての知人たち──悲しいほど少なかった──の意識の欠片を見つけると、女は自分の記憶を吹き込み、協力を求めた。同調する精神は増えたが、それでもやはり、あの男が生み出す憎しみは減らなかった。

 女は、クラウドのことを思った。地上で現実を生きているクラウド。ライフストリームを漂う憎しみを減らすには、現実の世界に満ちている憎しみを消さなくてはならない。クラウドの力を借りられないだろうかと女は思った。しかし同時に、そのことでクラウドが傷つくのではないかとも思った。女が知っているクラウドはとても傷つきやすい心の持ち主だった。