LIFE STREAM Black3
人間たちの騒ぎをよそに星は日常を取り戻した。男は、ライフストリームに溶けてくる心の暗部とでも形容すべき精神が多くなったことに気がついた。男は、なかなか消えずに漂う、その
男は星の命に身を潜めて世界を巡り、さらに多くの人間に刻印を刻み込んだ。地上には、日常を無くした人間が多く、そんな者たちが抱える心の暗闇は、男の誘惑によってさらに広がっていった。
やがて男は思う。これがおれの仕業だとクラウドに伝えたい。これがおれの仕業だと人間どもに伝えたい。それには肉体が必要だった。自分の声で伝えたいことがあった。自分の手で切り刻みたいものがあった。
母の力を借りようと思った。母の肉体の
男は未来を思い浮かべた。しもべたちが母を見つけ出す過程で、おれを知る者と出会えば、その精神から、おれはかつての自分を知るだろう。そしてさらに、母の力を借りれば、おれは完全に現実の存在になることができる。もし足りないものがあっても心配はない。クラウドがおれを完全にしてくれる。
──それが始まりになると男は思った。